IT-BCP体験セミナー 開催報告

会員番号645 是松 徹

1.セミナー名称  IT-BCP体験セミナー
2.開催日時    2014年10月25日(土)13:00~17:00
3.開催場所    大阪大学中之島センター 講義室303
4.当日参加者   受講者  10名
          スタッフ 荒町、尾浦、金子、松井(BCP研究プロジェクト)
          広瀬、三橋、小河、鬼松、是松(セミナーグループ)

 5.開催概要

当セミナーは、ケースシナリオを使った体験演習によりIT-BCPのポイントを把握することを狙いとし、今年度から開始した新しいセミナーです。教材を開発したBCP研究プロジェクトとセミナーグループが共同で準備・運営を進めました。カリキュラムは演習2題と2本の講義から成り、演習は受講者10名を2チームに編成して実施しました。各演習の最後に検討した結果をチーム単位にまとめて発表いただき、講師講評を踏まえて受講者全員で成果の共有を図りました。

5.1 オリエンテーション/事例企業の解説 (荒町氏)

bcp_20141025_02はじめに、当セミナーで把握すべき内容として以下を提示しました。

・初動対応の演習を通じて、IT部門に要求される行動を体験する。 ・グループ討議での気付きをもとに、IT-BCPの重要性と自社で取り組む場合のポイントを確認する。 ・IT-BCP策定への道筋として、災害対策本部運営の実際や訓練・演習で鍛えるIT-BCPを学ぶ。 その後、演習の対象となる事例企業(スーパー)の概要を説明しました。

5.2 グループ演習 (進行:金子氏)

あらかじめ設定した9つのシーンに対し、各演習のテーマに沿ってIT管理部門としてどのように対処すべきか個人で検討の上、チームとしての見解をまとめました。まとめた内容は、模造紙にシーンごとにポストイットも活用しながら書き出し、2チームそれぞれのリーダ役の方から発表を行いました。

検討内容に対して意図的にタイトな時間設定とし、限られた時間内で多数の案件を一度に迅速に意思決定する重要性に気付いていただく狙いで、インバスケット研修の手法を採用しました。

(1)演習1(災害発生直後の初動対応)

初動としてIT管理部門はどのように対応すべきかを検討しました。

・優先順位付け、どの部署の誰にどのように指示を行うか等

(2)演習2(IT-BCPのポイント検討)

bcp_20141025_01IT管理部門として、何を事前に準備・計画していればより適切な対応が可能であったかを検討しました。

・行動計画/ルール、危機対応時に有効な文書/資料、ダメージを少なくする事前対策等

(3)講師講評/演習の解説 (尾浦氏・金子氏)

各チームの発表内容に対し、講師側から実務体験も踏まえて講評を行いました。また、9つのシーンの設定の背景と初動対応、及びIT-BCP策定のポイントについて解説しました。

  5.3 講義1:危機対策本部の実際 (尾浦氏)

まず、演習課題を全社BCPの視点から掘り下げ、初動段階において全社BCPの発動状況がIT-BCPやIT部門にどのような影響をもたらすか、また、実際の危機対策本部において全社BCPがどのような経過をたどって発動されるかについて、阪神淡路大震災など過去の大災害における初動の実例を交えた解説が行われました。

次に、危機対応の長期化に際してBCPの実効性を大きく阻害する「社内温度差」の防止に触れ、対策本部体制における機能の絞り込みと各班が担う機能の明確化、組織的機能と物理レイアウトの一致、状況認識の共有、引継ぎ、ローテーション終結基準等の重要性について、米国防総省で運用されている現場指揮システムの紹介を交えて解説が行われました。

最後に、常に機能の拡張・統廃合を意識してシステム設計・開発を行ってきた上級IT技術者は、状況変化に強いBCPの策定に必要なスキルを既に有しているとの指摘がなされました。

  5.4 講義2:訓練・演習で鍛えるIT-BCP (松井氏)

訓練・演習を行わないIT-BCPはテストをしていないソフトウェアと同じでバグがたくさん残っており、有事の際の実効性に不安があるという話から講義が始まりました。また、東日本大震災での情報システムへの被害の傾向として、ネットワークの被害が相対的に大きいことがデータとして示され、今後クラウド化が進む中で、この傾向には留意する必要があるとの説明がなされました。

続けて、訓練の話に移り、机上訓練と実機訓練の対比において、実機訓練は本番系システムに与える悪影響や本番系システム停止が困難であること等から、現実的には机上訓練を推奨するとの説明がなされました。そして、有効な机上訓練としてDIG(※)をITに応用する手法が紹介されました。

このIT版DIG訓練の利点として、システム環境全体の可視化ができ、詳しい知識がない人の参加が容易になること、実施が手軽・簡単であること、様々な意見が収集できることがあげられました。

最後に、いざという時に本当に有効か、副作用はないかとの視点から、実機訓練、机上訓練それぞれについてのシステム監査人が意識すべきリスクが示されました。

※D:災害(Disaster) I:想像力(Imagination) G:ゲーム(Game)の頭文字をとって名付けられた災害机上訓練のノウハウ。

  6.受講された皆様の感想

受講された皆様からは、以下のようなご意見をいただきました。(アンケートから抜粋)

・演習により、5W1H、特に誰が、という指示の重要性等気づきがあり参考になりました。
・BCP、IT-BCPについて、自社の対応を考えるのに役立つ内容でした。
・講義1の単独セミナーを企画いただければ幸いです。ぜひじっくりご教示いただきたいと思います
・演習、実践のヒント、盛りだくさんで、使っていける手法を一つ一つ試していきたいと思います。
・演習は詳しい人の意見が聞けて、いろいろな気付きがありました。
・限られた時間に有益な内容を盛り込まれており、有益でした。
・自分自身で考え、議論し、そして講師に教えてもらうのはよい方法だと思います。
・もっと講師の時間があってもいいかと思いました。
・「IT-BCPが難しい」と思っているのは、専門用語が多いことと、つながりがわからないところで、やはり今日もわからない用語が多かった。
・各グループの演習結果を後で共有いただけると、復習する際に助かります。

7.感想

IT-BCPに関する気付きを提供するという方針で当セミナーを初めて開催しましたが、受講者の感想は概ね好評でした。半日のカリキュラムで演習と講義を体験でき、ダラダラ感がなくコストパフォーマンスが妥当であったととらえていただけたと感じています。一方で、講師の時間が不足、じっくり聞きたいところが時間の関係で割愛されたという感想もいただいており、インプット学習の重要性と演習とのバランスをどうとっていくかが今後の課題の一つだと認識しました。

限られた時間の中で、受講者の皆様には真摯に演習等に取り組んでいただき、また、演習で発表いただいた内容には、講師側で用意していた正解とは異なった視点の優れた解答があり、スタッフ一同大いに勉強させていただきました。

今後とも当セミナーを継続して開催していくべく、近畿支部内でBCP研究プロジェクトとセミナーグループの連携をより強化していくように考えています。

受講者の皆様、スタッフ/関係者の皆様、ご協力ありがとうございました。

 

以上