SAAJ近畿支部 第135回定例研究会報告(報告者:荒町 弘)

報告者:No1709 荒町 弘

1.テーマ  : 地方自治体の基幹システム再構築におけるSLA(サービスレベル・アグリメント)について
2.講師   : 近畿大学経営学部 津田 博 先生
3.開催日時 : 2012年9月21日(金) 18:30~20:30
4.開催場所 : 大阪大学 中之島センター 2階 講義室201

5.講演概要
平成の大合併を経た地方自治体ではここ数年の間に基幹システムの再構築の動きが活発になっており、自治体クラウドによるシステム構築事例が増えつつあります。従来からも自治体における基幹システムの安定的な運用は常に最優先の課題ですが、システムの構築形態(自己開発・パッケージ導入)や運用形態の多様化、そしてIT部門職員の人員構成やスキルなども変わっていく中、その課題はより一層大きなものになっていると考えられます。
自治体が運用するITシステムの品質維持と向上のためのツールとしてSLA導入があり、今回、津田先生が自治体に対して実施したアンケート結果とその分析結果をもとに、ご講演をして頂きました。
ご講演の内容は、主に、「調査の背景」「自治体のSLA導入について」「アンケート調査と結果の分析・集計」「SLAの定義」「SLAに関する成熟度モデル」「まとめ」という流れで行って頂きました。
自治体クラウドの採用は、正に「所有」するITから「利用」するITへの移行であり、標準的なパッケージソフトを複数団体で利用することで3割のITコスト削減が期待されているとのこと。その一方で、業務を標準ソフトにどれだけ合わせられるかという利用部門における問題と、ITサービスとしてのレスポンス等の品質保証をどのように行うかというIT部門が担当する課題が可視化されてきていること。そして、SLAを細かく 定義した場合の利用団体、サービス提供企業双方のメリットやデメリット等についても具体的に説明して頂きました。
実際にSLAを導入し運用している自治体はまだ数が限られており、管理する自治体側にも相応の負荷がかかることから、実際には人口規模で15万人以上の自治体でないとまだSLAの導入は負担が大きいのではないかというコメントや、西日本では努力目標型のSLAが多く、東日本ではペナルティ有の目標保証型のSLAの方が多い傾向にあること等も教えて頂き、大変参考になりました。
質疑では、「全国の自治体に一律に適用できる標準的なSLAを策定して欲しい」という希望や、「コスト削減に逆行しない程度のSLAのコスト感について」の質問、「SLAを細かくすることで対応できるベンダーが限られるというベンダーロックの恐れはないか」等の各種質問が出ました。
是非とも津田先生には、更に多くの情報の分析をして頂き、全国に標準適用が可能なSLAの基準について、ご教示頂きたく思いました。ありがとうございました。

以上