SAAJ近畿支部第151回定例研究会報告 (報告者: 林 裕正)

会員番号169: 林 裕正

1.テーマ   消費税の複数税率化の動向とシステム監査
2.講師    ジョイント・ホールディングス(株)IFRSグループ・ディレクター  システム監査技術者・公認システム監査人  田淵隆明氏
3.開催日時  2015年3月20日(金) 18:30~20:30
4.開催場所  大阪大学中之島センター 講義室201
5.講演概要

20150320講師は、近畿支部の会員であり、近畿支部において「システム監査法制化推進プロジェクト」の主査を務めておられます。今回は、消費税の複数税率化の動向とシステム監査について、お話しいただきました。講師による講演の概要は以下の通りです。
「2017年4月に消費税の10%への引上げが延期され、それと同時に軽減税率が導入されることになりました。ただ、この複数税率化による業務負担の増大やシステムの対応を懸念する声が聞かれます。そこで、今回は、会計システムの対応状況と課題、そして、システム監査人としての留意点について解説します。」

講演の目次は次の通りです。

§1.軽減税率制度導入のタイム・スケジュール及び方向性
§2.税制改革の絶対的な前提と間接税のあるべき姿
§3.軽減税率に対する誤解への説明
§4.新税の制度設計の基本的考え方
§5.物品に対する新税 「新物品税」
§6.高額飲食税及び高級食材に対する新税
§7.通行税の復活
§8.特別なサービスに関する「サービス税」及び「リゾート税」
§9.ギャンブル課税
§10. その他の間接税
§11. 〔補足〕脱法行為の抑止

また、上記の講演後に、「システム監査人の将来像は如何に」と題して、具体的な事例を何点か挙げ、セミナー出席者と意見交換を行いました。
なお、講演内容については、当協会の会報に講師が投稿されているので、そちらを参照ください。
・2014年2月号(№155)
システム監査と税制改革【弱者に優しい消費税】~消費税の複数税率化と物品税の復活に注意~
・2014年3月号(№156)
システム監査と税制改革(2) 2015年以降の「新消費税法」に関するシステム監査上の留意点
・2014年4月号(№157)
システム監査と税制改革(3) 「担税力に応じた新税」に関するシステム監査上の留意点

6.所感

本講演を聞いて感じた事を述べたいと思います。一つめは、「システム監査」と、「コンサルタント」との違いです。双方に求められる知識やスキルには重なる部分が多いと思いますが、「情報システム監査実践マニュアル」(赤本)には「コンサル、監査、審査の同異」と題して、その違いが記載されています。これによると、「監査」と「コンサル」の大きな違いは、「基準性」と「独立性」の有無としており、これは、どちらが上とか下ではなく、社会的機能の違いである、としています。また、システム監査人の倫理規定第12条(自己研鑚)は「 システム監査人は、システム監査を行うのに必要な専門能力および監査技術の向上に努めなければならない。」としており、システム監査人は、今回の講演内容のような「専門能力」の取得も今後益々重要になると思いました。
2つめは、「システム監査の多様性」です。今年6月に開催されたシステム監査学会の研究大会の講演プログラムを見ても、システム監査の範囲が非常に多岐に渡っていることが分かります。一人の監査人が多くの業務や最新のITに精通していることが理想ですが、例えば金融機関、医療機関、行政機関では、情報システムの違いが大きく、従来は、それぞれの業種や情報システムに精通した監査人が対応することが多かったと思います。しかし、異なる業種の事業体が連携するシステム、例えば「地域包括ケアシステム」では、自治体と医療機関の連携が求められるため、双方の業務知識が必要になります。今後は、このような異なる業態が密に連携するシステムが増えていくと予想されます。このような異業種が連携するシステムの監査には、複数の専門監査人がチームで対応することが必要となるため、新たな監査のスタイルが求められるのではないかと思います。

(参考)

1.システム監査学会 第29回研究大会
http://www.sysaudit.gr.jp/taikai/2015taikai.html
2.地域包括ケアシステム(厚生労働省ホームページ)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/