SAAJ近畿支部第147回定例研究会報告(報告者:林 裕正)

会員番号169  林 裕正

1.テーマ   暗号通貨ビットコインの脆弱性と可能性
2.講師    京都聖母女学院短期大学 生活科学科 准教授 荒牧総合研究所代表 中小企業診断士 荒牧 裕一氏
3.開催日時  2014年7月18日(金) 18:30~20:30
4.開催場所  大阪大学中之島センター 講義室301
5.講演概要

saaj20140718講師は、近畿支部の会員であり、近畿支部において「ソフトウェア著作権研究プロジェクト」の主査を務めておられます。今回は、最近非常に話題となっている「ビットコイン」について、講師ご自身の経験を踏まえ、暗号通貨の脆弱性と今後の可能性についてお話しいただきました、講師による講演の概要は以下の通りです。 「暗号通貨(仮想通貨)ビットコインは、2月下旬に大手取引所「マウントゴックス」の倒産を機に社会問題となりました。しかし、その後も海外での取引は活発に行われています。今回、私自身のビットコインの取引・運用経験を踏まえて、ビットコインの仕組み、脆弱性、ビジネスや投資対象としての可能性等についてお話しします。」

(1)ビットコインの概要

・ビットコインは、暗号技術を応用した仮想通貨であり、2009年に「中本哲史」と名乗る人物が考案した内容を元にビットコイン財団が関連プログラムを開発し、公開している。 ・発行上限は約2100BTCであり、最初の4年でその半分、次の4年で4分の1を発行する。 ・新規発行は、「採掘(マイニング)」と呼ばれる方法で行われる。 ・小数点以下8桁まで細分化が可能である。 ・現在、類似の通貨が多数(数百種)登場している。

(2)ビットコインの仕組み

 ・ビットコインそのもののデータは存在せず、ディジタル署名を使ったデータだけを管理する。 ・ディジタル署名を使うことにより、正当な権利者からの譲渡であることは保証される。 ・ディジタル書名はコピー可能であるため、二重譲渡は防げない。そのため、「ブロックチェーン」と呼ばれる独自の登録システムにより二重譲渡を監視する仕組みを取っている。 ・ビットコインを送信には、公開鍵を一部加工してアドレスとして使用する。取引データをブロードキャスト送信し、その取引データがブロックチェーンに登録されることで、正当性を公示する。 ・送金手数料は自由であるが、高額の方が優先処理される。(0.0001BTC以上が目安) ・ビットコインの採掘(マイニング)とは、ブロックチェーンに追加するために必要なキーを計算で見つける作業である。 ・マイニングのソフトは公開されているので、それをダウンロードして採掘するが、大きな計算パワーを必要とする。 ・マイングを集団で行い、成功した場合は仕事量に応じて成果を配分する「マイニングプール」も現れており、個人が比較的小さな計算パワーで参加しても、ビットコインを取得できるようになった。

(3)ビットコインの可能性

・投資対象としての魅力がある。相場変動は激しく、マイニングの利回りは3~7%/週。2週間毎に大きく低下。 ・決済手段として、特に海外への少額送金では手数料が安いため、魅力がある。 ・寄付や、ネットショップのポイントとして利用できる可能性がある。 ・将来的には、データの所有権の公示手段として利用できる可能性がある。

(4)ビットコインの危険性

・秘密鍵の漏洩や破壊により、利用できなくなる危険がある。 ・「トランザクション展性(transaction malleability)」と呼ばれる脆弱性がある。マウントゴックスの経営破綻の原因は、本脆弱性を突かれたものであると言われている。 ・マインニングは、合意形成のプロセスであるため、マイニングに参加する計算パワーの過半数が悪意を持った操作をすれば、正当なプロセスが保証できなる可能性がある。(51%アタックと呼ばれる) ・サイバー攻撃、不正アクセス、ウィルス被害等の可能性がある。

(5)ビットコインの利用体験

・今年からビットコインを利用し始めたが、マウントゴックスについては、申請中であったため、実損は無かった。 ・交換サイトへの不正アクセスで保有するBTCを全額引き出されたが、運用側が不正アクセスによる被害と認めたため、被害額は全額補填された。 ・その他、売買時の操作ミスは多数、経験した。

6.所感

マウントゴックス社の経営破綻を契機に暗号通貨についての話題が盛んになり、関係する書籍もいくつがか発刊されました。私もいくつか購読しましたが、自分で実際にビットコインを利用していないため、実際にどのようなものかが十分に理解できませんでした。今回、ご自身でビットコインの取引を行っておられる荒牧先生より、ビットコインの仕組み、脆弱性、今後の可能性についてご講演頂き、理解を深めることが出来ました。暗号通貨の今後については、法規制の整備等まだ不透明と言えるかも知れませんが、同種の暗号通貨が多数開発されていることを考えると、いろいろな課題を解決しながら発展していく可能性は大きいと感じました。今後もインターネットの利活用分野が拡大すると思われますので、インターネットでの利用を前提とした暗号通貨が、国家通貨を補完する形で発展することは十分予想されます。システム監査人としても今後の動向に注目していくべきと考えます。 [本報告作成に際し、下記の書籍を参考に致しました] ・斉藤賢爾著  『これでわかったビットコイン』(太郎次郎社エディタス) ・吉本佳生・西田宗千住著  『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』(講談社 ブルーバックス)

以上